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2009年12月12日の記事

読書メモ

永江朗『インタビュー術』 (講談社現代新書/2002年)

フリーライターの永江さんが、自身のインタビュー手法を明かしたり、インタビュー記事の実例を出しながらその解読をしたりする本。主には文芸インタビューが中心なので、まあちょっと違うけど……と思いつつ、インタビューに対する考え方自体は僕自身が考えていることとあまり相違なく。やっぱりインタビュアーのパーソナリティって出ますよね。

 

河合幹雄『終身刑の死角』 (洋泉社新書/2009年)

河合幹雄さんは法社会学者で、僕が学生時代に非常勤でうちの大学へも教えに来ておられました。ちなみに彼の父親が河合隼雄さんであることは最近知りました。河合さんの講義は、例えば日本の弁護士のミニマムチャージであるとか、示談交渉のテクニックであるとか、法解釈学で凝り固まった頭(僕らのゼミは法解釈学ですらありませんでしたが)には刺激的な内容で大変面白かったです。

本書で河合氏は、現在の刑事政策の実態を踏まえながら、その「必要性」を問われている終身刑創設について異議を唱えています。実質的には無期懲役刑が本当に「仮出所無しの無期刑化」している、そして受刑者の高齢化が進み、矯正と老人福祉がセットになってしまうような現状の矯正政策から考えると、創設の意味は薄い。そして、死刑廃止の流れではなく犯罪厳罰化の流れで終身刑が創設されれば、こうした現状の矯正政策上の無理な部分が本当に限界に達する点を指摘しています。それでいて河合氏は死刑存置の立場を取ります。死刑の執行、あるいは死刑判決には懐疑的な立場をとりながらも、なお抑止力が認められるから、という論旨です。まあ、死刑制度については個々人の信念が出るので致し方ないでしょう。

それでも本書の冷静なところは、犯罪発生、起訴、有罪、実刑などの統計的資料、あるいは財政や矯正政策の現場など、実際の犯罪から刑罰、その後の社会復帰までを丹念に見つめ、現状を正確に把握している点だと思います。そこからどういう結論を導きだすのかは多少異論がないわけでもないのですが、河合氏の説は一理あります(僕は死刑廃止派なのでその点が異なるというだけです)。