【ネタバレ】K.K.P. #8 『うるう』初日
というわけで、新しいK.K.P.が幕を開けました@グローブ座。
今回は小林賢太郎一人芝居+徳澤青弦が板付きで音楽、という趣向。みなさんもうご存知POTSUNEN『THE SPOT』の「うるうびと」が下敷きになっています。
以下、ネタバレですのでご注意を。
舞台の背景には、木の板を貼りつけたようなセット。上手には青弦の演奏エリアがあります。
【お話】
お化け「うるう」が住むと言われている森に、人目を避けて暮らしている謎の銀髪の男「ヨイチ」(小林)。そこに「マジル」という少年が迷い込んできます。何をするにも一人余る、そして一つ足りないという経験をしてきたヨイチと、似たようでいて違う特別な存在であったマジルはひかれ合いますが、それが故に再びヨイチはマジルを再び遠ざけようと決意します。ヨイチがたった一人で誰とも交わることなく暮らす理由は……。
「うるうびと」は、非常に悲しい話(特に悲恋の話)ではあったのですが、今回はまた別の“うるうびと”であるヨイチ(余一)の話。小林賢太郎は事前に「大人のための童話」と宣言していましたが、まさにそんな感じでした。
ここ最近小林作品を見ていて思うのは、この人はストーリー・テラーではないな、ということ。それ以外の設定、状況、演出には数々のマジックがあり、そこに魅了されて僕も足繁く劇場に通うわけですが、決定的に足りないのはお話そのものの強度・深度だと感じました。人の心にうごめく業のようなものをとらえようとしていないのが、だんだんちょっと物足りなく感じているのは事実です。
しかし、そこを差し引いても、この人の描く世界は魅力あふれるものだと思っています。舞台上には存在しないマジルを描き出す力、徳澤青弦を舞台装置として見事に利用(というと言葉が悪いけど)する力。舞台の広さをうまく生かして、パフォーマンスを繰り広げるさまには脱帽です。
すべてのパフォーマンスの精度がグッと上がり、何気ない動作一つで魅せるのがうまくなったように思いました。
青弦は、言うまでもなく、ものすごくチェロがうまく、しかも昨今の音楽をよく理解しているという稀有な音楽家でありますが、今回はディレイやルーパーを駆使しながら、チェロ1本とは思えない世界を見事に描き出していたのではなかろうか、と思います。
まだ初日、これからどう化けていくか。天王洲であらためて見るのが今から楽しみです。
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