土田英生セレクション『燕のいる駅』&小林賢太郎Potsunen P
取れちゃったチケットは仕方ない、というばかりに、三鷹で土田英生セレクション『燕のいる駅』マチネ、横浜で小林賢太郎『Potsunen P』のソワレという強行軍でした。
以下、ネタバレも含みますのでご注意ください。
(クッションとしてKAATの案内板の写真を載せます)
まず土田英生セレクション『燕のいる駅』。前回の『ー初恋』も見ています。
【作・演出】土田英生
【出演】酒井美紀 内田滋 千葉雅子 土屋裕一(*pnish*)、尾方宣久(MONO)/中島ひろ子/久ヶ沢徹
【あらすじ】
春、燕が巣をつくる頃─
昔なつかしい日本の風景を模してつくられた「日本村四番」。
そこにある駅も一昔前のローカル線の駅舎を思わせる。
いつもと変わらない穏やかな時間。
しかし遠くの空にはパンダの形をした雲。
突然、人は消えた。理由は分からない。
駅に残った人々は穏やかな景色の中でただただ待つ。
これが世界の終わりなのか?
見上げる空にはパンダ雲が不気味なうねりとなって
ゆっくりと広がっている......。
http://mitaka.jpn.org/ticket/1205180/ より
以下、感想。
端的に言えば終末のお話で、結果誰も救われないパターンなのですが、土田さんならではの機微といいますか、登場人物たちの微妙な心の揺れをコミカルに、少し悲しく描く感じが印象に残りました。
伏線的に用意されたさまざまな設定は、ほとんど回収されないまま、ただただ登場人物のキャラクター設定に深みを足すために使用された感じ。まあその辺りが若干後味悪くも感じるのですが。
人生なんて、大切な人に大切なことを伝えないままもどかしく終えていくことが多いんだよな...思ったりなんだり。
でもどこかに優しさが感じられるのが、土田さんの作風なんでしょうかね。
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で、『Potsunen P』。今回は横浜、パリ、モナコの3都市公演で、横浜は海外公演の前哨戦的意味合いが大きいのでしょう。ちなみに最前列上手側でした。
内容はこんな感じでした。
1.シー
窓とドアがたくさんある部屋にて本を読むPotsunen氏。いろいろな物音が邪魔をするので、それを探り当てて“シー”と静かにさせます。途中電話が鳴り出し、その電話を探し当てるべくドアを開けまくる。擬音とシンクロしたパントマイム。
2.日本検定
以前からやっている、■のパズルを組み合わせてさまざまな形を作るネタを、壁に投影した『日本検定』なる本とシンクロさせるというネタ。これを見ていて、Potsunenは古典落語的領域に来たように感じました。既存のネタでも切り口が新しくなることでまた新鮮に見えます。
3.んあえお
この4音だけを発して会話のやりとりを成立させるネタ。むせて「え、お」となるところだけ(音楽的に言うと)譜割りが細かくなってシンコペになっていたのがさすがです。
4.漫画さん
壁に投影されるオノマトペや効果線に合わせてコマ単位で演じる、というもの。視点も正面だけではなく、俯瞰になったりする辺りはさすがですね。これ結構好きでした。
5.授賞式
何かの賞の受賞スピーチ……なのですが、でたらめな言語でしゃべる。SEで客席の反応が分かる、という仕掛け。これだったか「んあえお」だったか忘れましたが、いっこく堂ばりの時差腹話術もこなしていました(マイクの音が遅れる演出)。
6.LINES
壁に投影されるラインをなぞっていろいろな動きを作るというもの。途中、ちょっと退屈しちゃいましたが、最後のオチは「paddle」以来の感じでこれもいいですね。
7.Diver
LINESと同様で、海に潜るもの。
8.Ending
1〜7を総決算。
End Talk
小林賢太郎が舞台でこんなにしゃべるのは初めて見たかもしれません。
まず海外公演を行うにあたって、外国人が面白いと思うものを目指すのではなく、自分が面白いと思うものを作ったとのこと。
そして横浜で公演する意義。中学生だった賢太郎少年が、相鉄ジョイナスの玩具売場へ、デモンストレーションのマジシャンにネタを話に向かう。そのとき二人のおばさんがエスカレーターで邪魔だったこと。
先日無印良品であぶらとり紙かなんか買おうとして、同じエスカレーターでカップルが邪魔だったこと。
これはなかなかよい話でした。
ちなみにコントの合間で、砂浜でたたずむPotsunen氏の映像が幾つか流れました。マジック的なものもひとつありました。
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で、私の感想。
近年の小林賢太郎作品で最も面白かったです。ラーメンズ『TOWER』以降のKKP、Potsunenでは一番かな。
当然海外公演を意識して、今回のPotsunen氏はほとんどしゃべりません。が、「自分が面白いと思うものをやる」という言葉はリアルに響きました。実際面白かったし。何をやったらいいのかが明確に見えていたように思います。
翻ってみると、KKP『うるう』は大変面白かったにもかかわらず、僕は“脚本が弱い”と書きましたが、やっぱり小林賢太郎はストーリー・テラーではないんだなと思います。コントをやるか、ストーリーを描きたいならそれを強固にするか、どちらかがよいのでしょう。
ただ、今回のPotsunenは、これまでのフォーマットを生かしつつ、まとめを超えて新しい挑戦ができているように感じました。
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