ヴィム・ヴェンダース『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』
ヴィム・ヴェンダース監督の3D映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』を有楽町で見てきました。
ピナ・バウシュは2009年に他界した、ドイツのダンサー/コリオグラファー(振付師)です。ヴッパタール・ダンツ・テアター(舞踏団。ダンス・シアター)を主宰しておりました。
で、まあ作品を見たことは無かったんですが、音楽・美術業界でこの人のことを知らないとちょっとモグリな感じもありまして、恥ずかしながらこれは見ておかねば的に行ってきたわけです。
監督のヴィム・ヴェンダースは説明も要らないと思いますが、『ベルリン天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の方です。
全体の構成は公演(再現?)と、いろんなところでヴッパタールのメンバーが踊ってる映像とを交互に出しながら、ピナとの思い出を語らせるという感じ。
言わずもがな、ヴェンダースの映像は本当に美しいですね。広角を多用して、実際よりも空間を広く見せながら、ダンサーたちの肉体を美しく描いていく。そもそもヴッパタールの舞台は演劇的と言われていて(だそうです)、舞台装置に水や土、岩などを用い(椅子の場合もあります)、元素的な美と動きの美が調和していく。
これを見てようやく「ダンス」とは何か?ということが分かってきた気がしました。身体の動き(静止を含む)による表現なんですね。各作品のプロットやテーマは分からないんですが、おぼろげながら「こういうことを表現しているのかな」ということが伝わってきます。愛とか美とか優しさとか痛みとか。それが言葉では表せないものだから動きで表現していく、んでしょう。言葉よりも饒舌に、身体が語る。
音楽も、大昔のジャズからタンゴ、ラテン、三宅純さんの書き下ろしまで(ノイズギターみたいなのはひょっとしてアート・リンゼイなのかしら?)。サントラはiTunesでも買えますが、さて、どこで買おうかしら。
で、3D「映画」というのは初めて見ましたが(劇場中継のライブは仕事で観たことがある)、舞台芸術の収録には大変面白い手法だなと思いました。この独特の奥行き感は...ドキュメントなんだけど、やはりカメラの虚構というか、非常に不思議な気がします。劇団☆新感線みたいなスケール感のあるものとかだったら絶対バッチリだし、最近映像化をあまりしない小林賢太郎作品だって、また違った見え方がしてくると思うんだけど...どうですかね?
今回ヴェンダースがよかったのは、やはり独特の奥行き感を、さらに強調して見せることができる点にあったと思います。そういう意味では作家性の強い映像にはすごくいいのかも。ストーンズをスコセッシが撮ったときみたいに。
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