2009年11月 7日

津田大介『Twitter社会論』

今さら僕が語るまでも無いほど評判になっていますが、津田大介さんの『Twitter社会論』(洋泉社新書・2009年)を読みました(洋泉社での紹介はこちら)。下にAmazonアフィリエイトでリンクしていますが、僕自身はAmazonで注文しつつも発送が遅れているのにイライラして、結局市中の書店で買いました。

本書は大きく分けて、Twitterの概要説明、著者の使用法、そして社会的な「使われ方」の3章立てです。最後に勝間和代さんとの対談も収録されています。

 

最初の2章は、Twitterユーザーにはもうおなじみのことをうまく整理していると思います。ここで僕が考えたのは、「Twitterと編集」ということです。

僕の仕事は雑誌編集(実質的には記者業でもありますが)。つまり、一つのことについて一定の文字数でまとめて記述することが仕事(の一つ)です。例えば、同じページにある製品の紹介キャプションを28文字×5行で書くとしたときに、3文字程度の誤差で収める書き方をします(これが製品の紹介ともなると、文字数の多少で製品に差がついて見えてはいけないといった配慮もあります)。これはライターや編集者の基本スキルの一つと言ってもいいでしょう。翻って「Twitterに書く」ということは、140文字で言いたいことを収めるということ。これは津田さんが本書でも触れていますが、彼や僕は普段から仕事でこうした作業をしていますから、なじみやすい媒体であるとも言えます。

それと同時に、「140字でしか書けない」ものをパーツとして編集すれば、また新たなコンテンツとなることを本書はメタ的に示しているとも言えるでしょう。事実、津田さんのまとめは(この後の第3章に至るまで)非常に分かりやすくツボを押さえていると感じました。ということは、「新書」という「旧来のメディア」にもまだまだ価値があることを示しているとも言えるわけです。

僕にとって仕事の現場は月刊誌ですが、それがWebになろうと単行本であろうと、ネタの鮮度・精度さえしっかりしていれば、それぞれの媒体に向けたアプローチを取るという「出し方」が変わるだけで、持っている「ネタ」は有効に使えると確信していましたが、本書でその思いをさらに強くしました。

 

もう一つ、本書の面白いところは、Twitterは属人的なメディアであり、生かすも殺すも発信者の使い方次第であるとしたところです。津田さんはTwitterの特徴を6種に分類していますが、そのどこをどううまく生かすかはまさにその人次第。リアルタイム性なのか、ReTweetを生かした伝播力なのか、はたまた書き込んだ内容を通してのキャラクター形成なのか……。どこか一つだけでもいいし、複合してもいいし。決して万能なものではなく、そこは「使い手に委ねられている」ことを明言した点が良いと思いました。

津田×勝間対談は、まあ、勝間和代はどこに行っても勝間和代だな、という感想でした(笑)。どうもこの人独特のセンスは、僕自身が持ち得ないところなので「ああ、カツマっぽい」と苦笑いするしかないのです。良くも悪くも。それでもこれだけ「時の人」を引っ張って来れるだけの何かを持ち得ている本に仕上がっていると思います。

 

それと個人的に洋泉社新書を手にしたのは初めてだったのですが、装丁を担当した菊地信義さんが手掛けたしおりが秀逸。そして、このタイミングで書籍化(新書化)した担当編集者の雨宮郁江さんおよびゴー・サインを出した会社が偉いと思いました。このスピード感が無いと、これからの出版の仕事は厳しいんじゃないかな……と自分の仕事を振り返ってみてもそう思います。

 

ただ、増刷決定しているとのことですが、ドッグイヤーなIT業界の話だけに、情報が古くなるのも早そうで、そこが難しいところですね(本書に限った話ではありませんが)。長期販売するものというビジネスモデルではやれないので、いかに早く出して、早くたくさん売るかが勝負……という世界は結構厳しいなぁ……。

デジタルカメラに例えると、どんどん新機種が出るカメラ本体に重きを置くのか、レンズやライトにお金をかけるのか……みたいな話なので、その選択はその人その人(法人を含む)に寄るんでしょうな。

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コメント[2]

あのしおり私もお気に入りです。
初めてこの新書シリーズの本買いましたが
しおりは別の本にはさんでます。

て、本の話が無い(笑。

ただ、twitterもそうですが、先日聴きに行った○松さんのレクチャーもapp shopでベンチャーみたいな経済寄りな方々が多く、ちょっと自分とはテクノロジーの使い方違うなと思ったばかりなので、興味ないのが半分。
対談は正論言っているのになぜかイラッとくるひとがいてなんなんでしょう、このいらいらは。

>じゃいさん
金儲け=ビジネスに直結するさせようとする感じが嫌なんじゃないですかね?

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