2010年3月27日

タラ・ハント『ツイッターノミクス』(文藝春秋) #twnomics

タラ・ハント、村井章子・訳、津田大介・解説『ツイッターノミクス』(文藝春秋/2010年)を読みました。

年頭に、津田大介さんにお話を伺う機会があって、そのときに“ウッフィーというネットでの貢献度を仮想ポイント化するような考え方があって、これを貯めておくとネットとリアル社会をつなげて何かしようとするときにものすごく力になってくれる”ということを聞いていました。もちろん本書が出ることと、解説を津田さんが書かれたことも含めて。

そんな経緯もあって、文藝春秋で一般モニター募集をしているという話を聞いたときにすぐ名乗り出ました。文藝春秋さん、ありがとうございました。

本書は原題が"THE WHUFFIE FACTOR - Using the power of social networks t build your business"ということで、Twitterに限らずネット上のソーシャルネットワークを使って、ビジネス的な着想をどう具体化していくか、というテーマを扱っています。

帯にも掲げられていますが、ネットを使って顧客や友人を増やす秘訣は以下の通りとしています。

 

・コメントには必ず返事をする

・個人攻撃とうけとめない

・有益なアイデアには公に感謝する

・こまめに改善する

・フィードバックはこちらから探しに行く

・あら探しをする人は必ずいると理解する

・製品やサービスは初心者を対象に設計する

・新機能や変更は必ず事前に知らせる

 

これまでマーケティングや製品開発などは、多くの場面でシークレットにされてきました。それをソーシャルネットワークを使ってオープンにし、集合知を募り、寄せられた知にはきちんとフィードバックをしていこう、というのが本書の大まかな主張であると思います。

そして、ウッフィーはこうした知的なやり取り、あるいは厚意や好意のやり取りを示す単位として、リアルなマネー経済と“並行する”新たな価値と考えよう、ということです。

こういう話をすると、すぐマネタイズはどうするのか? 厚意だけじゃ食っていけないだろ?といった意見が出てくると思います。また、アイディアの独自性担保、業務上の守秘事項などなど、いろんな壁もあるでしょう。しかし、そういうやり方をしてうまくいっていないなら、発想を切り替えてソーシャルメディアをうまく使えばいいんじゃない?というヒントを掲げているものだと僕は理解しました。

一つ頭が痛いのが、広告の取り扱いについてです。本書では“企業側が大きな声で叫ぶ手法は既に効果が薄くなっていて、ユーザーと対話をしていくべきだ”ということが書かれています。

僕自身は(大げさに言えば)メディア企業に勤めていて、会社の収益の大きな部分が広告売上です。その効果測定に疑問が投げかけられることもあるし、時にはいわゆる記事広告を制作することもあります。こちらの思惑とクライアントとの意向のすり合わせに苦心することもあります。

それが無意味か?と言われると、“それはちょっと違うんじゃないの?”と言いたくもなります。無論、本書で語られているような姿勢は重要ですが、その意識さえあれば広告も無意味なものではないんじゃないかな?と、作ってる側としては思います。

また津田さんは“だからといって昔から言われているような、人と人とのつながりを大事にしようという話とは違うんですよ”ともおっしゃていたのですが(僕の記憶に基づいて書いていますから誤解があるかもしれません)、「違う」という表現よりも「より拡張する」という言い方がより的確なのではないかなとも思いました。

というのは、僕自身仕事をしていて、人と人とのつながりがあってできているなと思うことが非常に多いんです。例えば「こんなことで困っています」という案件をネットに書いて解決できないことも、思い当たるところに電話したり相談するだけであっさりと解決した、ということが頻繁にあります。ソーシャルメディアは、スピードと広さとカジュアルさという意味ではものすごく大きくて、だからこそ集合知になりうるのですが、同じようなことはリアルな社会でも十分に言えるわけです。本書でも、ソーシャルメディアを足がかりにしていかにリアルな世界に転化するかといったことがイベント運営などを事例に書かれていますが、ソーシャルメディアとリアルな世界での行動とが両輪となって初めてものごとがうまく回りだす可能性となるのが、現在のあり方ではないかなと思います。

……と、感想としてはごく当たり前のことしか書けないのですが、僕のような会社組織に属する者以上に、個人事業主の方などにとっては大きなヒントとなることが詰まっている本だと思いますので、一読をお勧めします。

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