2009年8月29日

【バレ有り】安田ユーシ・犬飼若博『双六ファイブ』

『双六』は安田ユーシさんと犬飼若博さんの演劇ユニット。僕が行くのは初めてですが、今回は5人編成ということです。

 

安田ユーシ・犬飼若博『双六ファイブ』

2009年8月26日(水)~30日(日)下北沢駅前劇場

出演:安田ユーシ 犬飼若博 オレンヂ(フラミンゴ) 中川晴樹(ヨーロッパ企画) 相澤一貴(モンブランズ)

作:川尻恵太/演出;犬飼若博

安田ユーシと犬飼若博が贈る「LIVE双六」シリーズの第5弾!ゲストに、最近は役者としての実力もメキメキ発揮し出した人気コントユニット「フラミンゴ」のオレンヂ、今や超人気劇団として全国ツアーも敢行する「ヨーロッパ企画」の中川晴樹、そして明るい狂気が弾けるモンブランズの相澤を迎え、演劇界に旋風を巻き起こします。ご期待ください。

 

相方が行けなくなったので、代打にDOさんが来てくださいました。ありがとうございます。

以下、あらすじとかなり厳しめの評価です。奇しくも1年前に見たsugarboy『maniacs』と全く同じ印象・評価ですので、あの舞台をご覧になられた方は僕が何を言いたいのかお分かりいただけると思います。

【あらすじ】

元高校球児でバッテリーを組んでいた栗原(オレンヂ)と四本(安田)。栗原は甲子園での決勝、9回二死満塁2−3で、きわどい球を投げてボールと判定され、負ける。その後、某国からのミサイル攻撃に対抗すべく軍が編成され、2人は高槻隊長(犬飼)の部隊に入隊。ほかに中年ニートだった有村(中川)と花火職人の息子であった港(相澤)がいるものの、配属された地区は田舎で、基本的は暇をつぶして毎日を送っているが……。

 

【感想】

役者はみんないいのに、脚本がミクロ的にもマクロ的にもイマイチでした。

シーンが細か過ぎるし、シーケンスが時間軸上に並べてあるわけではなく、ただ結論に導くために順番を入れ替えてあるだけ。よって、時間軸の前後に必然性がないのです。一応、それが3年前であることなどは舞台上手のスクリーンにテキストで表示されるのですが、その説明が無いと成立しない時点で負けでしょう。最前列下手側のお客さんはスクリーンが見えていたのか……? “それは、3年前のことでした”と一言言うだけで全然違うのに……。

それと同時に、彼らが所属する隊が軍隊だと分かった瞬間から嫌な予感がしていたのですが、その予感は案の定当たってしまって、要はカミカゼ的な感じになってしまったわけです。まあ、それは個人的な主義とかいろいろあるので、そのことそのものは細かく言いません。しかし、その死にどういう意味があるのかまで描けていない。物語の敗北だと思います。

先日まで読んでいた大塚英志『キャラクター小説の作り方』の受け売りですが、その死の深さを描いたことで手塚治虫は漫画の記号的表現(死が記号化してリアリティを欠いてしまうこと)から脱しようともがいていたわけです。その点で言えば、この結末は“死の記号化”でしかないのです。

というわけで、非常に不満が残る舞台でした。

唯一評価できる点は、キャラクター設定は役者の個性が生きるような感じであったことでしょうか?   しかし、犬飼さんはもっといろいろ動ける人なのに、若干地味でした。そこには犬飼さんが演出担当でもあるということへの配慮というか、遠慮があったようにも思います。

 

作家の川尻氏は、ラーメンズ小林賢太郎の制作アシスタントをしていますが、身近にいる師が天才過ぎて、何を学び取っていいのか分からないんじゃないか?とさえ思います。

小林賢太郎は、人が死ぬ話は書かないと明言していますが(死を予感させることはあってもはっきりとは描かない)、それは上記のような、人の死が意味するものまで描く責任を感じていて、その上で“装置”として人の死を描くべきではないと考えているんだと思います。あくまで勝手な想像で、自分で書いていてもそこまでコバケンを美化する必要はないとさえ思うのですが(笑)、彼はそこまで確信が持てないものは描かないタイプであることは間違いないでしょう。

その意味で、川尻氏はもっと勉強が必要ですね……。

 

【補足】

栗原のライバル投手、三科(相澤の二役)が死んでいて、ゴキブリに生まれ変わって栗原に語りかけるシーンで、棒の先に付いたゴキブリが何度も落下してしまい、その度にオレンヂくんが「あ、飛んだ! 飛ぶなー」とフォローしていたのが妙にツボでした(客席全体的に)。オレンヂ・相澤、オレンヂ・安田など2対2での絡み方は、各プレイヤー同士の間合いの取り方がうまいのか、スルっと見られるんですよね。

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コメント[1]

まずい、このエントリー、「双六ファイブ」でググるとトップ10に入ってる(汗)。しかも犬嫁日記より上……。

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