2009年9月15日

突っ込まれるインタビュー術

今日、部署の人たちと昼飯を食べながら、『徹子の部屋』にオノ・ヨーコは出演可能か?という話題になりました。恐らく話は噛み合わないと思いますが、黒柳さんは誰に対しても話が噛み合わないとも言えるので、その点は問題にならないのかも?

そんなヨタ話はさておき、大学のゼミの後輩に、大宮冬洋君というフリーライターがいます。学年は2つ下なのですが、僕が5年まで居たのでゼミ在籍時期も重なっている、というわけ。ゼミのOB会の幹事役もやってくれるので、大変ありがたいです。

……と、そんな彼ですが、たまたまTwitterで源太郎さんが紹介していたので、彼が日経ビジネスAssocieのサイトでやった中村うさぎへのインタビューを読みました。

中村うさぎの発言内容も大変面白いのですが、ここで気がついたのは彼のインタビュー術です。ちょっと引用してみましょう。

O いや、古い考え方なのかもしれないですけど、結婚したからには永遠の愛を誓って、子どもは二人作って、休日には別荘の山小屋へ行って、ドラム缶のお風呂に入る、みたいな生活を夢想するんですよ。離婚してもいいなんて考えるなら、最初から結婚しません。

N ちょっと待って。ドラム缶の風呂って何?

 

O 昔流れていたテレビCMでそういうシーンがあったんですよ。
N
あのさ、そんなことを言っている時点で大宮さんは結婚には向いてないよ!(笑) 女の人に「僕にとっての結婚生活のイメージは休日に別荘のドラム缶風呂に入ることです」と言ってみな。「はあ? なんじゃそら!」ですよ。いや、入ってもいいよ。後ろから妻が白い目で見ているかもしれないし、娘は「このオヤジ、このまま茹で上がって死んでしまえばいい」と思っているかもしれないと想像できるならね。

O ……。
N
私は、いかにも幸せそうな夫婦や家庭というものをあまり信用していないのよ。だって、幸福の形って人それぞれのはずでしょ。でも、「幸せそうなふり」はパターン化するのよ。休日は家族で車に乗ってキャンプに行ってバーベキューをする、みたいな。

 

ここで大宮君は、「自分のアホな考えをさらけ出して、そこにツッコミを入れてもらうことで話の核心を手元へぐっと引き寄せる」というテクニックを使っています。恐らく意識的に使っているわけではなく、彼のインタビュアーとしての芸風なんでしょう。

学生時代の彼はなかなか優秀な人で(そんな評価ができるほど僕は偉い先輩ではありませんでしたが、少なくとも僕の目にはそう写っていました)、自分で納得できないことには絶対に頷かないタイプだったと記憶しています。アホなコメントは、半分は本音でしょうが、彼自身はそんなアホな人ではないんです。アホだったら日経BPさんとかNHK出版さんと一緒に仕事なんかできません。

彼は単に正直なだけだと思います。ああ、ここまで正直に言う人だったら、こっちだってそのくらい正直に話してもいいんじゃないか、と。そこが彼のインタビュアーとしての面白さなんじゃないかと思いますね。

僕は仕事上、どうしてもテクニカルなことを聞かなくてはいけないことも多く、こちらから誘導するようなインタビューの仕方も時々します(相手の出方次第ですが)。だけど、話の本質はそこには無いんだということもよく分かっていますから、そこをそこはかとなくアピールしたりもします。話題に食いついてきたときには、そっちに降ってみたりとか、“あ、ここキャッチに使えるな”とか。そういう進行とか誌面上の構成とかをいろいろを考えながらインタビューするのは面白いんですが、非常に疲れます。

たぶん大宮君の場合は、もっと大雑把にインタビューでつかむべきところというのがあって、そこにたどり着くようにもっと緩くナビゲートしているんでしょう。それはそれで、決して緩いわけではなく、プロとしての彼の在り方なんだろうなと思います。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.impactdisc.net/mt/mt-tb.cgi/185

コメント[2]

そういえば、学生時代の恩師の秋山邦晴先生(故人)が、NHKの番組でオノ・ヨーコさんのインタビューしてたのを見た覚えがあります。(NHKアーカイブスで調べたら1990年だった)
まぁ、先生の場合は元々フルクサス関連で顔見知りだったんで会話成り立ってた覚えが。

中村うさぎのエッセイ、実は初期のを何冊か持ってて、なんだか捨てられない(苦笑) 落ち込んでるとき読むと、妙に変な勇気が沸いてくるだよね~。

秋山邦晴さんって存じ上げなかったんですが、高橋アキさんのダンナさんなんですな。オノ・ヨーコがフルクサスなのって結構みんな知らないよね? 基地外かと思ってる人も多いと思うけれど、決してそんなことはなくて、単に生き方がオルタナティブなだけですよ。

コメントする