2009年11月 1日

マイケル・ジャクソン『THIS IS IT』

近所のMOVIXでやっているということを知って、昨日『THIS IS IT』を見てきました。

僕自身は、そんなに熱烈なマイケル・ファンだというわけではないのですが、昔親父がMTV(全盛期)を熱心に見ていたこともあって、今でも80'sヒッツは結構好き。意外でしょ?

『THIS IS IT』で最も興味があったのは、マイケルが2009年のツアーとしてどんなものを提示してくれるつもりだったのかでした。

ライブ・ショウの世界はここ5年の技術革新がすさまじいわけですが、10年ツアーをやっていないマイケルがそうしたテクノロジーをどう使ってくるかなという点に関心があったのです。

 

始まるやいなや、とても50歳のオッサンのパフォーマンスとは思えないすごさ爆発。あんなふうに踊れないし、ましてや合わせて歌えないです、普通……って書いてしまうと月並みですが。

最も関心したのは、すべてをマイケルが決めている点。例えば、バーンと登場してから音が鳴り出すまでの間であるとか、曲のテンポとかコード感、その他諸々をその場で指示していきます(それぞれにどういう理由があるかは映画を見てください)。それがものすごく的確。なんていうか、“間”の取り方がうまいんです。さすがに子どものころからショウビズの世界にどっぷり浸かっている彼だけに、そうした肌感覚のようなものがあって、すべてを熟知しているといった趣でした。音に合わせて動き、動きに合わせて音を修正していく、といった感じでしょうかね。と同時にアイディアマンでもありまして、「ここのコーラスはディレイっぽい感じで合わせてほしいんだけど……そう」とかね。その場にいるスタッフ全員が「確かにそっちの方がいいな」と思えるような指摘をバシバシとしていく。

しかも、リハも全力投球で歌って踊っています。全く力を抜かない。報道では『THIS IS IT』ツアーのリハは毎日3時間やっていたとありましたが、あれを3時間……毎日ライブやっているようなもんです(何度も書きますが50歳です)。

そんな全力投球のマイケルですが、スタッフに対して超優しい……。ギタリストには「ここでトップ・ノート、そう、ここは君が一番輝くところだ!」と言ってみたり、あまりにスタッフが盛り上げるから構成を確認するだけのつもりが超本気でフェイクを歌ってみたり。彼がショウの精度を追求していくのは、あくまでもオーディエンスに楽しんでもらうためであり、そのプロとしての姿勢の徹底ぶりには感動することしきりなのでした。

ステージセット的なことを言えば、まだまだ大仕掛けが完成する前だったようでそこが見られなかったのは少々残念だったのですが、「スリラー」の3Dビデオを収録したり、ロボ・コップみたいな扮装をしたダンサーをCGでYMO『増殖』みたいにしたりなど……マイケルと言えばPV、なわけですがそこのすごさも堪能できそうな感じ。

PA的に言うと、卓は恐らくSOUNDCRAFTのVI6(チラっとしか見えなかった)だとしても、最も気になっていたのはイアモニに対応できるのかという点でした。最初は、あれ?普通にできてるじゃん?と思ったのですが、やっぱり難しいみたいで、「I want you back」の途中で歌を止めてしまうんです(残念!)。たぶん時間軸的にはこの方が先だったんでしょう。でもすぐ修正してやってるからすごいなぁ……。

もちろんすべてのスタッフが一流なわけですが、個人的には……というかみんなすごいと思ったはず、なのは、ギターのオリアンティちゃん24歳。ブロンドのむっちり美人。しかしとんでもなくうまいです。「Beat It」のギター・ソロなんてほとんどヴァン・ヘイレンのまま弾けてる。なんでもサンタナやスティーヴ・ヴァイとも共演歴があるっていうんだからすごいっすね。

 

2週間限定なので、早く見に行った方がいいですよ! しかし、もう1回見に行くかと言われると、個人的にはNoです。DVDもたぶん買わないな。なぜなら、やっぱりこれはメイキングなんですよ。マイケルが見せたかった完璧なショウではないんです。

あと、映画としてはMAの荒さが若干気になりました。リップ・シンクというか、1〜2フレームくらい音と絵が合っていないところが結構ある……恐らく(ビデオによっては)タイム・コードを拾っていなかったから、オフラインでなんとなく合わせるしかすべが無かったんじゃないかな、という気もします。

逆に言えば、この映画ができたのは、デジタル化があってのことだとも思いました。つまり「マイケルの個人的な記録」とされてはいますが、どう考えても映像・音声ともにクオリティが良過ぎるんです。つまり、音声はリハの段階からすべてマルチトラックで収録しておいて、後からバーチャル・サウンドチェックに使うとか、後々ソフト化する際のテスト用として収録しておく、と。そして映像の方も、ステージ・サイドのスクリーンに投影するためのカメラ・リハとして収録しておく(たぶんそれもマイケル自身がチェックしたりするんでしょうね)。かつて記録メディアがアナログだったころは、物理的にそれだけの本数のテープやフィルムを回すのはなかなか難しいことではありましたが、今やすべてがHDDなので、物理的な意味での管理が楽になったというのが大きいような気もしますね。

それと同時に、この映画を見てしまうと、マイケルが自殺する理由なんてどこにも無いし、事故だとしても睡眠薬なり鎮痛剤が必要な感じには全く見えないんですよね……。

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