2010年6月13日

Pat Metheny Orchestrion Tour

 

昨日、家族3人でパット・メセニー『オーケストリオン』ツアー@すみだトリフォニーホールに行ってきました。

 

 

『オーケストリオン』とは、かつての自動演奏ピアノの通称であります。僕が子どものころ、浜松のステーキあさくまにもこんなものがありました。紙にパンチ穴が開けられた文字通りの“ピアノロール”に従って、ピアノの中に仕掛けられた太鼓やらホーンやらも一緒に鳴る、というもの。そんな仕掛けを新たに作成し、アルバム『オーケストリオン』を制作。そのシステムを抱えてのワールド・ツアーです。

 

正直、僕はパットの熱烈ファンではありますが、パット・メセニー・グループ以上のものはその他の編成で期待していないし、今回プレイヤーはパットだけだから、そんなに期待はしていなかったのですね。

 

開場前、また瀬川さんにお会いしてしまった。パットに行くと必ずお会いしてしまう。しばし立ち話。

 

会場に入ると、まずオーケストリオン・システムには布がかけられていて、パット登場。まずはガットギターで気の向くままメドレー。「Phase Dance」「Minuano」「September Fifteenth」「This is not America」などなど。もうこれだけでお腹いっぱいと思いながら、これらの曲は後々やらないことは分かってちょっと残念。

続いてバリトン・ギターで新曲。そして42弦ピカソギターで新曲。

 

そしてIBANEZのシグニチャー・モデルに持ち替えて弾いていると、手前の「Mr. Finger」と呼ばれる手前の機械がカチャカチャとリズムを刻み始め、最後ギターをかき鳴らすとともにシンバル・ロールが“ぐわわわ〜ん”と鳴る。

そして布が剥ぎ取られ、『オーケストリオン』楽曲のスタート。後方にはフレーム・ラックにドラムやパーカッション、エレベなどが組まれ、鳴っているパートはライトが点くというギミックあり。ファニーでありながら、ちゃんと音楽を奏でるオーケストリオンたち。曲が終わるたびに、パットは後方のオーケストリオンをフィーチャーしている、という身振りをします。

だいぶ経ってからMC。「よくある質問は2つ。1つは“Are You Crazy?”。もう1つはどういう仕組みになってるのか?」と。パットも幼いころにオーケストリオンを見て、いつかこういうことをやってみたい…それが夢だったと。僕はジャズギタープレイヤーだけど、自分一人で音楽を奏でてみたいと思っていた、と語ります。「あるとき日本にツアーできたら、あちこちのホテルにYAMAHA Disklaviaがあって、「イパネマの娘」や「サテンドール」を弾いている!」。

オーケストリオン組曲が終わってから、オーケストリオン・システムに組み込まれたギターを手に取って、自動演奏されるギターをその上から弾く、といった芸当も披露。続いて『Secret Story』から「Antonia」。先日佐近田展康さんとこの曲の話題をTwitter上でしたばかりだったので、ちょっとうれしい。

最後に、オーケストリオン・システムを使った即興を披露して、本編終了。

アンコールは「Stranger In Town」とインプロ、もう1曲ガットギター+オーケストリオンをやって終了。3時間もやってくれました。大満足。

 

帰りは近所の盟友・北村先生と一緒に帰ってきて、異味香でご飯を食べて帰宅。

仕組みについては、シーケンスはDigital Performerがメインで、Pro Toolsも使っているらしい。もちろんオリジナルのプログラムも走っているわけですが、インプロやセンシング&制御系ではAbleton Live+Max for Liveも使っている模様(Novation LaunchPadも手元にあったし)。具体的にいえば、アンコールでナッシュビル・チューニングのギターをまずかき鳴らして、その音をLiveでループしつつ、その他のオーケストリオン・システムのトリガーをMax for Live経由でループ……という感じかな。

と、種明かしをすると分かる人には分かってしまうんですが、いわゆるルーパー的な使い方と、MIDI、すなわち制御信号のルーパーとを織りまぜてやっているので、サンプル・ループのプレイとはかなり違ったことができるんだなと思いました。

それと、ベロシティ(音の強弱)的には割と一定な感じに聴こえるオーケストリオンですが、そもそもオーケストリオンというのはそういうものだったりします。僕は、あるオルゴール美術館が制作した、自動演奏ピアノの音を収録したCDを持っているのですが、これを聴くと生音なのにベロシティが一定でものすごく笑った記憶があるのです。翻ってこのツアーでは、プログラムされた曲よりもパットがギターでトリガーしていた曲の方がダイナミクスが感じられたので、システム的にはそれよりも数段上だったように思いました。

 

さらにぜいたくを言うならば、オーケストリオンvsPMGというライブを見てみたい……

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