2013年3月24日

ウェイン・ショーター・カルテット

JAZZ WEEK TOKYO 2013のウェイン・ショーター2日目に行ってきました。

シアターオーブに着いたら耳鳴り鳴ってきて、ちょっと焦りました...

正直に言うと、ショーターの新譜『Without A Net』を最初に聴いたとき、あまりピンと来なかったんですよね。緊張感だけがただあって、曲想がはっきりしないコンテンポラリー・ジャズじゃん...って。でも、com-postで皆さん絶賛していて、なんだろな〜と思いつつ予習を兼ねて聴き直していたら、随分印象が変わりました。リズム隊のタイム感が傑出していて、彼らが対話をしていく中で、ショーターが自由に舞う。そのビシビシと来る感じ...ああ、こういう求道的な緊張感は、それはそれで分かる...と。

でも、実際のライブ、そこからさらに予想を覆すような感じだったのであります。

まず、メンバーがお互いのプレイに対して、面白いことをすると笑ってる(笑)。ショーターも時々口笛を入れたり、ピアノのダニーロ・ペレスも譜面をパタパタと仰いでマイクに拾わせてみたり、弦を手で押さえてミュートしたりと面白いアプローチを次々繰り広げます。このバンドの鍵はこの人なんじゃないかな。

で、ベースがジョン・パティトゥッチだったのですが、、、あれ?この人、アコベこんなにうまかったっけ?と思いました(それはアルバムを聴いていても思いました)。どうもチック・コリア・エレクトリック&アコースティック・バンドのイメージで手数の多い人というイメージなのですが、安定したグルーブ。一緒に見に行った上司も「グルーブ感は天性のものじゃなくて成長するんだね」と言っていました。

ドラムはブライアン・ブレイドじゃなくて、ジョナサン・ヴィンソンというプレイヤー。うまいです。うまいですが、ブライアン・ブレイドのすごさとはちょっと違うかな...アルバムのイメージを持ってライブに臨んだので、そこのすり合わせが僕の中ではできなかった。ブレイドのバシっと決まる感じに対して、彼はもっと自由奔放なのかなという気もします。

で、内容なのですが、曲の移り変わりがシームレスで、手を止めたのは4回くらいかな。気がつくと次の曲になっていたり、あるいは元の曲のままだったり。きっかけはだいたいペレスかパティトゥッチが出していました。ショーターはテナーとソプラノを持ち替えたり。テナーはマークVIで、ソプラノは62RSですね。マイキングの関係もあってか、ソプラノの方が音が太く感じました。本末転倒な言い方だけど、アナログ・シンセみたいなぶっとい音です。で、リズム隊がなにやらかにやらとコミュニケーションしているところをすり抜けていく。4小節以上のフレーズを吹くことは稀だったんじゃないかなぁ。この人のプレイを分析するなんてことは僕には不可能です。結局そこはよく分からない。でもあの太い音を形成するのは、そんな並大抵ではできない、ということは自分で管楽器触るようになって分かるようになりました。

ということで、これだけ攻めてるジャズ(これが攻めてるのかどうかはさておくとして)を「お芸術」ではなく、エンターテインメントとして成立する芸術性を持って、80歳のショーターが取り組んでいるという事実そのものが、やっぱりすごいんだなぁと思いました。見る前はそんなことどうでもよかったんですけど、見てしまうともうそこが一番かな。

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