2014年10月11日

パット・メセニー・ユニティ・グループ・ジャパン・ツアー(東京2日目)

神、パット・メセニー大先生のツアーでございました。

会場はすみだトリフォニーホール。オーケストリオン・ツアーでもここでしたね。取材できたのもよい思い出です。

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パットを中心に、クリス・ポッター(reeds)、アントニオ・サンチェス(ds)、ベン・ウィリアムス(b) アントニオ・サンチェス(ds)で結成されたユニティ・バンドのライブはブルーノート東京で見ましたが、これにジュリオ・カルマッシ(お得意のいろいろ担当)を加えたユニティ・グループに再編されてのライブでした。

 

 

最初はピカソ・ギターを持ったパット先生の独奏。いつもの感じかな...と思ったら、オートハープ弦を多用する、しかもメロディをこれで弾くという演奏。ベースだけ6弦部で押さえていましたが、ひょっとするとヘキサフォニック出しで何かをトリガーしていたのかな……?

続いてユニティ・バンドのメンバーが登場。ユニティ・バンドのレパートリーや『80/81』『SONG X』などの曲もありで、オーソドックスなジャズっぽい……かのようなんですが、ベンのベースがいい感じに効いているように思いました。

中盤、ジュリオが登場してユニティ・グループのレパートリーを。サンチェスの後ろに居て見えなかったのですが、キーボードは2段で、オーケストリオンのオペレートも彼が担当していたっぽいです。曲によってはボイスもあり(レッドフォードよりちょっと細いかな?)、フリューゲルも吹き。フリューゲル持ったときにはゴンドウさんかと思いましたが。このとき後ろに出ていた映像がダメ過ぎですね。何の意味もないし、映像が絡むライブをたくさん見ているせいで、ちょっと残念だなと思いました。なぜか1曲だけ、ベンがベース・ソロだけエレベに持ち変えるという忙しい編成。そうそう、クリス・ポッターが1曲だけアコギ弾いてました(驚)。

終盤はパットとメンバーのデュオ。ベンとは「Bright Size of Life」やりました。まあベーシストだとこのチョイスになるだろうなぁ。本編の最後は全員で「Have You Heard」。

アンコールは計4回で7曲も。総計3時間の長いライブでした。アンコールはバンドとパットのソロとが互い違いでしたが、ソロは「TRAVELS」やるのかなと思ったら最近よくやってるメドレーで、「Phase Dance」のイントロから「Minuano」に行ったり、「Last Train Home」「September FIfteenth」だったりという感じでした。「Last Train Home」のリハモとかすごくてうなりました。あとビートルズの「ミッシェル」とかもやりました。

 

……とまあ、こんな感じだったわけですが、やっぱり「Have You Heard」とか、アンコールの「Are You Going With Me」とかやると、客席も盛り上がるし、僕もうれしいし、バンドも楽しそうに演奏しているんですよ。それは見ていても分かる。でもしかし、新しいことをやる、あえてやる。難しくて厳しい顔しながらでもやる。還暦でもやる。そこがパット先生の先生たるゆえんだなぁと思いました。でも「Have You Heard」のソロで「いとしのレイラ」のリフ入れちゃうのはサービスも度が過ぎていると思いましたけど。

ユニティ・バンドは、恐らくパット・メセニー・グループでツアーに出るのが年齢的な負担もあって厳しい、ということもあっての結成だと僕は思っています。名前を挙げるまでもなく、ライル・メイズやスティーブ・ロドビーにとって、長いツアーはもう結構な負担でしょう。

と同時に、ユニティ・バンドは、もう少しトラッドな編成をベースとしながら、ポリリズミックなアプローチを入れたりといった試みをしていて、そこが面白いところではあります。ユニティ・グループになるとPMGと何が違うんだ?という気もしますが。

パットもソング・ライティングをユニティ向けにしていると思うんですよね。あえてポップには振らずに、それが(PMGほどは)受けないと分かっていながら、演奏者としてのしのぎの削り合いみたいなところを求めているのかな、という気はしました。

で、やっぱりクリス・ポッターは圧倒的にうまいです。どんなに難しいこともさらっとやってのける。でも彼がNo.1かというと、必ずしもそうとは言えないなと思います。そこは個性の問題で、ああいうプレイとかこういうプレイだったらもっとほかの人の方がかっこよく見えるだろうな、という気もしました。イチローみたいな感じですかね。

あと、ひっかかったのは、今回の編成だとすみだトリフォニーは音響的に向いていないなと思いました。ホールの残響自体が結構あるので、音が散ってしまう。80年代に市民会館で見たジャズ・コンサートみたいな音場で、例えばビッグ・バンドとかだったら映えるんでしょうけど、曲ごとにリバーブの感じを微妙に変えているのに、それが全部もやっと聴こえるだけというのが残念ではありました。

パット先生ももう60歳ですが、見た目が全然変わらないし、エネルギッシュだし、もう脱帽ですね。「やっぱりダメだ」とか「期待はずれだ」とおっしゃる向きがいるのもなんとなくは分かりますが、彼の探究心、研究心というのがひしひしと伝わってくるステージだったと僕は思います。

あと最近の動向からつい、いわゆるNew Chapterのジャズとの関係性みたいなものもつい考えたくなるのですが、まあ関係できそうなのはベンだけだろうなと、世代的な意味というより出音でそう思いました。根拠は薄弱ですけど。昔、ムーンライダーズの岡田徹さんが「サンプリングされるドラマーと、サンプリングしたリズムのようにたたくドラマー」という見事な分類を語っていましたが、ユニティ・バンドは前者だと思います。でも決して真似できないんだ、これが。でもPMGもまた観たいです。

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