2014年11月11日

間違いだらけの自転車選び〜クロスバイク編

あまりに自転車のことばかりネットで書き散らしているので、仕事で伺った先でTwitterやFacebookでつながっている方に「自転車買うならどんなのがいいの?」と聞かれまくる昨今ですが、これは……非常に難しい問題です。

音楽家に分かるような話をしましょう。

「エレキギター弾きたいんだけど、何買ったらいいの?」

今どきは1万円くらいから結構まともそうに見えるギターがあります。いや、本当に。僕も持ってるし。

他方で、「やっぱFender Japanくらいは」「いや、あそこのアレがいい」「初心者はSquireで十分だろ」「Fender Custom Shopだろ」「工房ものだろ?」「CBS以降は認めない!」みたいな激論が交わされることは請け合いです。

自転車にもこういうフシはありまして、非常に答えにくい部分があります。というのも、その人が何を目的としているのかが見えないと、いまひとつ「これを!」とお勧めしにくいんですね。

(以下、シンセ、マイク、マイクプリ……と同様の会話が延々続きます)

例えば、ジャマイカ音楽研究家でサイクリストの藤川毅さんはこうおっしゃいます。

藤川さんは10代からずっとロードバイク一筋で、まともなロードが欲しければ20万円という線はその通りだなと僕も思います。

でも、普通に考えると、20万円って結構な金額ですよね。ポンと出せる人は相当裕福か、よほど入れ込んでるか。そのくらい出すつもりで乗るんだぜ!という人はロード買った方が幸せになれると思います。

一方で、僕が考えるミニマムはクロスバイク。クロスバイクとはなんぞや?という話は別の機会に譲りますが、マウンテン・バイク(MTB)を舗装路向きにしたものとお考えください。一般的にはドロップ・ハンドルではなくバー・ハンドルです。

クロスバイクは確かに中途半端な位置づけで、僕もついついクロスバイクのドロップ・ハンドル化などやってしまったのですが、“ガチなサイクリストになるつもりはないけど、休日に気軽に楽しみたい”という向きにはいい選択肢だと思います。飽きたらなくなったらロードを買えばいい、と考えると、手ごろなクロスバイクはお薦めです(詳しくは後述)。

(あるいはタイヤの小さなミニベロも面白いと思うのですが、僕自身持っていないし、ミニベロこそいろんなものがあって話がややこしくなるのでパス)

で、そのクロスバイクを買う際の注意点を幾つか考えてみました。

 

【価格】5万円前後のものを買え

自転車で5万円ってそれでも結構高いと思うんですよね。1万円くらいでママチャリが買えるし。でもスポーツ自転車として考えると、最低ラインはここだと僕は思います。中には4万円代で良い物もありますが、一つの目安として考えてください。

よく、楽天市場とかで2〜3万円くらいで、変速のついた、バーハンドルで、ちょっとイキってる自転車とかを見かけますが、こういうのは大抵見た目だけスポーティな“ルック車”と呼ばれるものです。

スーパーで安売りしているジャージと、機能性の高いスポーツウェアとの違いを考えると分かりやすいと思います。確かにスーパーで売ってるジャージでもジョギングはできるけど、運動のパフォーマンスを考えた服装ではありません。スポーツ自転車は軽量性や走行性能が重要ですから、“見た目だけ”のものではその楽しさ、効果が分かりません。それが味わえる最低ラインが5万円前後です。逆に、それより高くてもいいんですが、そうなるとロードに近づいてしまうので、最初からロードを買った方が幸せになれると思います。

前にも書きましたが、僕がスポーツとして自転車に乗り始めたときに買ったのは、内装3段変速シャフトドライブというかなり変わったものでした(というかこれを買ったのを機に乗り始めたのが正解です)。街乗りには全く問題ありませんでしたが、サイクリングロードを走ってるとバンバン抜かれるし、思ったように乗れない。イライラが募って、結局友達に譲ってしまいました。ちなみに4万9千円しました。高い勉強代だな……ホント。

 

【購入店】スポーツ自転車専門店で買え

サイクルベースあさひとかイオンバイクとかダイシャリンといった大型自転車店にも多少はスポーツ自転車が置かれているのですが、ルック車もあり、どれがどうなのよ?というのは正直門外漢には全く分からないでしょう。なので、スポーツ自転車しか置いてないお店に行くのがよいと思います。

東京ならY'sRoadとか、バイシクルセオとか、いろいろありますから、まずはのぞいて見てください。決してY'sRoadやセオがお薦めというわけでもないんですが……まあいろんなメーカーのものがあるので、見てみるのが良いと思います。どこで買うかはまた別の話かもしれません(メンテを考えると近所が良いです)。

……とは言いつつ僕は、一般車も多いメーカー直営店でクロスバイクを買いました。これは試乗会でいいなと思った目当てのモデルがあったからですが。

 

【サイズ】サイズの合ったものを買え

「え?自転車にもサイズがあるんですか?」とよく言われます。あります。そりゃあるでしょ。

スポーツ器具として身に付けるものは、すべからくサイズがあります。サイズの合ってない自転車は、すごく乗りにくい。本来のパフォーマンスが出せません。ロードバイクの世界ではサドルがわずか数mm動いただけでパフォーマンスが全く変わるくらいです。

多少はサドルやステム(ハンドルをフォーク・コラムにつなぐパーツ)で何とかなりますが、あくまで多少です。

 

【何を買えばいいの?】見た目で決めてよし

先にも書きましたが、クロスバイクは中途半端な存在です。ロード>>クロス>>>>>ママチャリ、みたいな位置づけだと思います。例えばロードなら30km/hでの巡航も割とできますが、クロスでこれを維持するのは結構難しい。車両の作りの違いも大きいですが、姿勢(ロードは前傾になる)と、ポジションの違いも関係しています。

ですが、これから自転車で本格的に楽しむぞ!という気持ちにどう向かうかはその人次第です。クロスで5万円くらいなら、次にロードを買うとしても、自転車を楽しむきっかけとしては悪くない投資ですし、近所への足だけになったとしても多少ぜいたくではありますが許容できるレベルじゃないかなと思います。

そして、このクラスのもので走行性能が圧倒的に違う、ということはそうそうありません。多少の差はあれど、その程度の差はタイヤを変えたりするだけでもだいぶ変わりますし。

なので、「こりゃー高いわ!」と思ってしまうものではなく、「いいだろ〜!」とちょっと自慢したくなるくらいのもので、見た目が気に入ったものが良いと思います。見た目が気に入らない物は満足度が低いですし。

家人もクロスとロードと持っていて、クロスはわずか片道3kmの通勤に使うのみになっていますが、ブランドと色に相当こだわって、かなり探して買いましたし、彼女は大変満足しています。

 

その他、経験則から提案したい細かな点としては、

・シャフトドライブやベルトドライブ、内装変速は特殊なのでやめる

・変速がグリップではなくレバー式

・クイックリリース(レバーで簡単にホイールが外れる)のもの

・サスペンションが無いもの(MTBではないのでサスが有っても重くなるだけ)

……がよいと思います。もちろん一般車として乗るにはこの条件は関係ありませんが、スポーツ自転車としてクロスバイクに乗るならこの辺りを押さえておきたいです。

……と、投げっぱなしはあまりに不親切なので、なんとなく思いついたクロスバイクの例を幾つか。

●Giant Escape R3

 

GiantEscapeR3.jpg

 

クロスバイクの定番中の定番。2015モデルから大幅なモデルチェンジがありました。安くてカラバリが豊富です。Giantは台湾の世界最大のスポーツ自転車メーカーです。なんだかんだ言って、多くのスポーツ自転車がGiantと、同じく台湾MERIDAのOEMだったりします。

 

●Khodaa-Bloom Rail 700A

 

rail700a_main.jpg

埼玉は越谷にあるホダカという自転車メーカーがあるんですが、今はGiant傘下で、Giant系列の工場(中国と台湾)で一般車を多く手がけています。そのホダカは2014年現在3つのブランドを設け、かつての国産ブランドの名を冠した一般車のMarukin、主にイオンバイクで流通するmomentum、そして本格スポーツのKhodaa-Bloomがあります。Khodaa-Bloomは、安いと言われるGiantよりもさらに安いGiantキラーなどとも言われています。Giantの日本支社とは全く別法人なので、対抗意識もあるのだと思います。Railシリーズはたくさんあり、“キラー”っぽい価格でこれを。僕のクロスもこのシリーズの軽量モデルRAIL 700SL(2014)ですが、すぐロード買うんだったらもっと安いのでも良かったな、という理由でこちらを。

 

 

●Raleigh RFL

 

RFL.png

 

僕のロードがRaleignなのでなんとなく(笑)。もともとイギリスのブランドだったのですが、日本ではARAYAというリム・メーカーが商標権を獲得し、プロデュースしているブランドです。Raleighはかつて日本にあったツバメ自転車の技術者だった方が手掛けていらっしゃるとかなんとか。

 

●RITEWAY SHEPHERD CITY

 

riteway.png

 

街乗りっぽい感じならこれとかもいいかなと。安くてちゃんとしてる。

 

●Bianchi ROMA4

 

ROMA4.jpg

 

家人のクロスがROMAシリーズなので。

 

キャプションがだんだん短くなってるところに「なんだっていいんじゃないの?」感満載です(笑)。まあいろんな見た目があるんだな、という例ですから、どれがお薦めというわけではなく挙げていることを強調しておきます(どれも乗ったことないので)。

 

付け足しておきますと、カタログを見て「これが欲しい!」と思っても、買えないことも。自転車はサイズ×カラー×構成(同じモデル名で番号が違う場合はフレーム共通でパーツのスペックが違うことが多い)の掛け算で、店頭在庫や流通在庫が無いことも多いです。またショップによって取り扱っているブランドがまちまちです。この辺りの事情もギターとよく似ていると思います。「62年タイプのDimarzioピックアップでレイクプラシッドブルーがいい」と思っても、在庫が無い、みたいなことはよくあります。「ショップに行きましょう」と言っているのは、そこの在庫でサイズが合って、ピンと来たものを買えばいいということです。ロードだったらじっくり欲しいモデルの入荷を待つのがいいと思いますが、すぐ乗りたいという欲求に応える方を優先するのがいいんじゃないかな?という提案です(もちろんじっくり探すのが好きな方はそちらで)。

 

本稿で「クロスはロードに対して劣るもの」という書き方をしていて、本当にそういう認識ではいますが、それでもクロスで80km乗ったこともあります。まあ僕のクロスはかなりロード寄りのものだということもありますが、川口から入間のアウトレットモールまで片道40kmを往復しました。道路の選択などはあまりうまくなかったと反省していますが、無理な感じは全くありませんでした。ただこういう乗り方をしているとすぐロードが欲しくなるのは間違いないと思います。

もちろんロードに乗りたいという方には、最初からロードをお薦めしますが、それはまた別の話。前述したように、藤川さんのおっしゃる20万円というのはなかなか現実的なラインだと思います。

 

……と考えてみるにつけ、僕自身のあらゆる買い物の仕方が、まず安いものを買って、満足できなくてある程度のものを買い足す(買い替えてはいない)、というパターンなので、あまり利口でないなぁ……と反省もします。何でも最初から最上級を選ぶという思い切った人もいますが、正直うらやましいですね。

今欲しいと思ってるロード、これまで費やした金額を考えると、最初からそれ買っていればたぶん買えるんでしょうね……はぁ。

人によってはでっかい沼であることは間違いないと思います。

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