2013年5月29日

楽譜の版面権 私見

ネオローグの香月さんから振られてきたので、ちょっと私なりの考えを書いてみます。

とはいえ、勤務先は楽譜出版協会加盟社だったりするので、

ちょっとどころじゃなくクリティカルな問題で、

イマイチ歯切れが悪いかもしれません。

 

 

楽譜のコピーは、できれば遠慮していただきたい、

一人一冊買っていただきたいなぁというのは本心です。

なぜならそれで食ってるわけですから、私(今の部署は楽譜を出していないんですが)。

 

で、香月さんから振られたのはいわゆる版面権みたいなものを楽譜に認めるのか?ということでしょう。

つまり、曲の権利(出版権)は、日本においてはJASRACなりが持っていることがほとんどで、そこの許諾さえ取れば楽譜のコピー出版は可能か?という問題があります。

なぜなら、一般に楽譜の作成自体に権利性が認められないからですね。

 

でも、実際に楽譜集なりを作るときに、コストがかかるのは、

著作権における使用料、印刷・紙の次が採譜・浄書です。

 

ということで、電子化も見据えて、版面権的なものを整えよう的なことを、業界団体としては主張して当然でしょう。

 

僕もそういう権利があったら楽だなとは思いつつ、

そこに頼らなくてもできる楽譜ビジネスというものもあると思っていて、

そんなに大きな不安はないなぁ、というのが正直なところです。

 

●オフィシャル・スコアとしてのアーティスト・ブック

●教則内容としてのコンテンツの独自性

●演奏内容に関する権利(ある種の二次的創作)とその楽譜化

●教則CDとのセットによるコンテンツのリッチ化による強化

●冊子としての楽譜ページのデザイン性

●著者・出版社の共同作業による出版コンテンツとしての著作権保持

 

……辺りで、特別に版面権みたいなものはなくてもいい(と断言はしないけどまあなんとかなる)ような気はしています。

 

世の楽譜集にはひどいものが多くて、特に海外のものに顕著ですが、

ただ楽譜があるだけ、ということもままありまして……。

そういうアイテムが、演奏したい人の本当に役に立つのかは大いに疑問で、

その点をクリアしたコンテンツしか(特に今の時代では)作る意味はないと

個人的には思っているし、たぶん会社(僕の勤務先のことです)の方針としても、

そのくらいリッチなコンテンツでないと(つまらないから)企画が通らないような気がします。

(他社のことはよく分かりませんし、言及する立場にありません)

 

ポイントは、その出版された楽譜が別個のコンテンツとして

著作物だと認められるようなものかどうか?なんじゃないかという気がします。

 

……ということで、私見でした。

 

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コメント[2]

よく考えたらこれ楽譜に限らないで、出版物全体に言えることだわ...

もちろん意識はしていますが、上の議論は、権利の話と、それでビジネスになるのかどうかの話を混ぜて書いています。
実は一つ、書いていない大穴があって、それは電子化云々とも関係なく、版面権などを認めたところで全く無意味なんです。ですが、だからといってそれがビジネスになるかどうかは全く別の話で、ビジネスとして全くうまみがないから誰もしないし、していないんですよね。

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